前回は、「6つのディヴェルティメント」の中に、ハイドンのオペラ「月の世界」からの転用が行われているという話を書きました。
この「月の世界」からの転用が行われているのは、第1,2,3,5,6曲目においてなのですが、実はここに入っていない4曲目では、バリトン・トリオからの転用が行われています。
”バリトン”、ご存知でしょうか?
写真:Wikipediaより
こんな弦楽器です。
表には6本or7本の弦が張ってありますが、それだけではなく、指板の裏に、9本∼24本の共鳴弦が張ってあります。
この共鳴弦は、表の弦に共鳴して鳴るという事ですが、それだけでなく、左手の親指でも弾かれます。
18世紀末までオーストリア、南ドイツ、東欧などで弾かれていましたが、調律も演奏もとても難しく、その後は段々と演奏されなくなっていきました。
ハイドンが仕えていたエステルハージ家の侯爵、ニコラウス・ヨーゼフ・エステルハージがこの楽器を非常に好んでいたので、ハイドンは175曲ものバリトン・トリオを作曲しています。
今回、演奏する「6つのディヴェルティメント」の第4番には、このバリトン・トリオの第97番の全7楽章の内、3楽章が転用されています。
「月の世界」からの転用では、曲にかなり手が加えられているものもありますが、このバリトン・トリオからの転用は、曲自体はほぼそのままで、バリトンパートをフルートに、ヴィオラパートをヴァイオリンに置き換えてあります。(チェロパートはそのままチェロで弾かれます。)
やはり元々が器楽曲だったせいか、ほかの5曲とは少し違う雰囲気があるような気がします。
ハイドンの生きていた頃には弾かれていた、この”バリトン”という楽器にも、少し思いを馳せながら聴いていただけたら幸いです!
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古楽器で楽しむバロック音楽番外編
古楽器で楽しむ古典派音楽 in アミーゴ!
【プログラム】
F.J.ハイドン:6つのディヴェルティメント Hob.IV:6*,7,8,9,10**,11
(*昼公演のみ、**夜公演のみ)